08月≪ 2017年09月 ≫10月

123456789101112131415161718192021222324252627282930

--.--.-- (--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
EDIT  |  --:--  |  スポンサー広告  |  Top↑

2006.06.16 (Fri)

思い出の喉ごし

アメリカンチェリー


先日、美味しそうだったのでアメリカンチェリーを購入しました。
手ごろな値段だし、甘みもまあまあなのでこの時期良く食卓に並べられる果物です。


ところで、このアメリカンチェリー。
私にとってはとても印象深い思い出と繋がる果物で、
手に取るたびに当時の事が鮮明に頭の中に蘇ってくるんです。

それは今から10数年前にもなるでしょうか。
当時私はドイツのハレという街で暮らしていました。
そこで知り合ったドイツ人の若者が、
ある日私を始め数人の友達を自宅に招いてくれたことがあったんです。
「家の庭に植えているキルシュが実をつけたから食べにおいで」
…と。
(キルシュ=さくらんぼ。アメリカンチェリーに形状が似てます。てか、そのもの?)


喜び勇んで私達は彼の家へ駆けつけました。
素朴だけどおいしそうな料理が野外のテーブルに並べられ、
その庭の先には数本のキルシュの木が実もたわわに立ち並ぶ。
あのメルヘンチックな光景は、今でも忘れられません。

「さあ、キルシュを食べよう!いくらでも木からもいで食べていいよ」
彼の太っ腹に感謝しつつ、私達は身の丈ほどのキルシュの木に殺到しました。
血のように赤く、つややかなキルシュの実が
「今が食べごろよ。早く私を手にとって!」と誘惑します。
それぞれ適当な実を3つほど摘んで、皆で一斉に食べ始めようとしました。

ところが。

いっただきま――――――……あ?(゚Д゚)(゚Д゚)(゚Д゚)」

あれ??

ふと、食べようとしたキルシュの実に無数の穴が開いているのに気づきました。
ごくごく小さい、まるで楊枝で刺したような穴が無数にキルシュの表面についています。
そしてその穴に、私達は言いようもない悪い予感を感じたのです。

…こ、この穴って…もしかして…。

試しに、実を指で二つに割ってみました。
すると。

―――――∑(TДT)∑(TДT)∑(TДT)



…何と、その実の穴の奥には、




無数の小さな白い幼虫が…。


(しばし絶叫)





全員、手に持っている全ての実を取り落としました。
「ねえ!この実、むっむっむっ」

虫がわいてるよ!!!

ドイツ人の彼に詰め寄る私達。
もう涙目です。てか暴露すると、私が一番ビビってました。
だって私、虫が大嫌いなんです。特にインセクトじゃなくてワームのほう!
あのブヨブヨした正体の無い感触(や、触ったことないけど)がダメなんですぅぅ~~!!

しかし、彼はニッコリ笑ってこう言ったんです。
「虫がいたって平気だよ。取ってから食べればいいじゃないか

……!!∑( ̄Д ̄)
え、食べるんですか?(;゚Д゚)
自分にあの幼虫を手でつまんで取り除いて、かの巣窟になっていた実を食べろと?
「……」
一斉に黙り込む招待客たち。
そこの上空だけ気圧が下がって雲が出来そうです。



【More】

そんな雰囲気を察したのか、彼はおもむろにキルシュの木に駆け寄り
一回りして戻ってくると
「だったらこっちのキルシュを食べなよ!(^∀^)」
と、穴の少ない無数のキルシュの実を差し出しました。

「これなら大丈夫、2匹くらいしか虫は潜んでないから!」

ミニマム2匹でもれなくかよ!∑( ̄▽ ̄;)∑( ̄▽ ̄;)∑( ̄▽ ̄;)

「どう?食べられそう?」
「う…ん…」

屈託の無い笑顔で、(最小限だけど)虫のついたキルシュを差し出され
次第に私達は追い詰められていきました。

私達は招かれた身、ここまでされて断ったら鬼でしょう。
けど…けどあの実は幼虫の巣窟なわけで…虫さんの食べかけなわけで…_| ̄|○ドウシタライイノ




「………」
ふとそんな困惑気味の私達に彼は思うところがあったらしく、
寂しそうな顔でぽつりぽつりと語り始めました。

「昔は、果物って言えばこれくらいしか無かったんだ。壁が壊れる前はね」

「バナナやキウイなんて実際に食べたこともなかった。本の中で見るだけで」

「一般人が食べられるようになったのってごくごく最近で」

「それまではこうして、自分の家の庭でキルシュを栽培するしか」

「果物を摂取する方法は無かったんだよ」

――――――(゚А゚)(゚А゚)(゚А゚)。。
虫相手に「うへえ」と叫んでいた私達の口がそのまま固まり、沈黙が押し寄せる。






ドイツと言っても、私が住んでいた街は
国民がビールとソーセージを手に笑顔で乾杯しているような、
そんな陽気な西の国ではありません。
私がいたのは「旧東ドイツ」。
ベルリンの壁が壊れる前は、今の某北のつく国と同じように謎のベールに包まれ、
国の内情を始め一切の情報を遮断していた元社会主義国家です。

勿論、私がいた当時ベルリンの壁は既に壊れた後でした。
正確に言うと、壁が壊れてから3,4年ほど経過した時期です。
ドイツ統一の熱がようやく収まり、
東の文化が西のそれへと飲み込まれてゆく混乱期でもありました。
資本主義の勢いに引きずられながら、
まだまだ社会主義国家の面影がちらほらと見えていた時代。
統一前の、西側諸国から隔離されていた旧東ドイツが
どれだけ物資に窮していたか、どれほど国力が衰えていたか、
後からやってきた「資本主義の怪物」の申し子である日本人でも
まざまざと感じ取れるほど、数年前までの荒廃の色が目に痛い街だったのです。



バナナやキウイが高級品って…日本じゃ何十年前の話だよ。
このキルシュの虫だって、きっと除虫剤さえ手に入れにくかった
東独時代の名残なんじゃないの?

私達は、彼の差し出したキルシュを手に取りました。
もうそんな話をされては拒む訳にはいかなかった。
実を割り、中に潜む白い幼虫を指でつつきだし、口の中へ放り込む。
黙々と食べ続けました。

可哀想と思ったわけじゃない。
例え今は壊れてしまった世界でも、制限された生活の中で
彼らが精一杯生きてきた道程を否定するわけにはいかなかったから。


ちょっと切なそうな笑顔で、彼が私達に聞きます。

「シュメックト?(おいしい?)」

私達は、口を揃えて叫びました。

「ヤ――――――!!!(うん!)」(T▽T)(T▽T)(T▽T)

いろんな意味で、泣きそうな顔をして。







あれからもう10年以上も経ちますが、アメリカンチェリーを見ると
いつもあの時のことを想い出します。

物資の無い国が拠り所にしていた果物。
当たり前のようにモノを手に入れられる自分の足元を、不意に改めてくれる
私にとってはとてもとても意味の深い、大切な果物なんです。




…え、何故それでタイトルが「思い出の喉ごし」なのかって?

そりゃあアナタ、あの時私はとにかく夢中で口に入れて、
虫が残ってるかもしれないあのキルシュを一気阿成に全部丸飲みしてましたから。




アレを噛んで味わうことだけは、例えあんな状況であっても、
どうしても私には出来なかったわけで(T▽T)…。(北の国から風)


この思い出と米粒は同時に考えない方がいい




スポンサーサイト
EDIT  |  22:17  |   |  TB(0)  |  CM(6)  |  Top↑

Comment

究極の選択って感じですね! しかも食べるなんて、素敵です。
ドキュメンタリーの世界みたいなお話ですね。ニュース映像や話でしか聞いた事のない、東西ドイツのギャップ、hatoさんは実際に体験していたんですね。
南北朝鮮が統一したとしたら、その経済格差は東西ドイツの数倍の格差になるそうです。難しい話ですねぇ・・・
ハンサム |  2006.06.16(Fri) 22:20 |  URL |  【コメント編集】

わーむ

チェリー好きな私ですが、
今後チェリーを食べるたびに思い出しそうなエピソード。笑
インセクトもいやですが、ワームはかなりきついですね。
私もはるか昔の新卒社員だった頃、
歓迎会でのみにつれていってもらったお店で、
ブロッコリーを口にしたら口の中にコロン感。
イヤな予感がしてそっと確かめたら、
予想通りのコロン状のゆでワーム。
しかもけっこうでかい。涙
叫びだしたいのを必死でこらえ、
膝をぎゅーっとつねったことを覚えています。
っていうか忘れてたけど思い出した!!笑
shiki |  2006.06.18(Sun) 10:24 |  URL |  【コメント編集】

資本主義の怪物の田舎に住んでいたワタクシは、畑からとってきたばかりのホウレン草やキャベツやトマトからいちいち虫を取り除くのが面倒で、そのまま食べてました。
貴重な蛋白源でありました。
東京では薬剤を使わない家庭菜園でも、虫が付かないんですよね。おそらく苗自体がそういう風に改良されているんでしょうけど、それもまた味気ないというか、虫も食わない不味いものを人間が食うという寂しさが残るというか。
さすがにタガメとかは食べられません。
たか |  2006.06.18(Sun) 17:07 |  URL |  【コメント編集】

ハンサムさん

ホントにスゴイ世界でしたよぉ~
でも、例えば昨日日本とサッカーで闘ったクロアチアなんかも当時内戦で大変な事になっていたし、もっともっと不穏な国がリアルタイムで存在したりして、ちょっと麻痺していた部分はあります(笑)。
そう言えば、あの頃とあるクロアチアの女の子と知り合う機会があったのですが、彼女も例に漏れず内戦による国の状況悪化で急遽帰国してしまいました。
今はどうしてるかなぁ…。生きのびているのか死んでしまったのかすら判らないです。今となっては。
hato |  2006.06.19(Mon) 13:01 |  URL |  【コメント編集】

shikiさん

イ――ヤ―――(T□T)!!
ブロッコリやカリフラワーって、いるんですよねえ、「例のあの虫」が。(ハリーポッター風)
そのせいで滅多に買わないのですが、たまに買ってもまるで鑑識捜査官のように綿密にチェックしてからでないと食べれません(泣)。

しかし…茹でワームですか…。
お店の人に「なんじゃあこりゃあ?!」とクレームは言わなかったんですか?
私だったらもう、箸でつまんで店中巻き込んでわめき散らしているかもしれません…。
hato |  2006.06.19(Mon) 13:12 |  URL |  【コメント編集】

たかKさん

……(T▽T)(すいません、言葉が無い…)

テレビなどでワームを主食としているどこかの国の部族を良く見ますが、本当に食べても大丈夫なんですね、アレらって…。

私も実家の母から「虫もついてない野菜なんて!」と言われながら実家の家庭菜園で作った野菜をよく送ってもらいます。
気持ちはとても良くわかるのですが、私はあいつら自体がダメなんです。あいつらさえいなければ虫食いほうれん草も食べれます。野菜の問題ではなく、奴らがいるかどうかが問題なのです。

例えば私がどこかの犯罪組織の一員で、警察に取り調べられてるとします。
きっと私は、カツ丼などでは陥落しない。
でもバケツ一杯の幼虫を見せられればベラベラ自白しだすこと間違いないでしょう…。
hato |  2006.06.19(Mon) 13:26 |  URL |  【コメント編集】

コメントを投稿する

URL
COMMENT
PASS  編集・削除するのに必要
SECRET  管理者だけにコメントを表示
 

Trackback

この記事のトラックバックURL

この記事へのトラックバック

 | HOME | 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。